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広島高等裁判所 昭和40年(く)12号 決定 1965年5月17日

少年 H・B(昭二〇・一一・三〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告申立人の抗告の理由は別紙(抗告申立書と題する書面)のとおりである。

所論は要するに、原決定が少年につき虞犯性があると認定したことは重大な事実の誤認であり、またかりに誤認がないとしても本件につき少年を特別少年院に送致する旨決定した原裁判所の処分は著しく不当である、と主張しているように解せられる。

そこで記録を調査して検討するに、少年は原決定で説示しているように、昭和三九年四月頃から無断家出して広島市の暴力団○○会の幹部○本○光の輩下となり、本件により原裁判所において審判に付されるまで、常時同人方に起居し、○本組員であることを自認し時には会長、組長などの身辺護衛役を買つて出ていたこと、右○本方には犯罪性のあるその他の組員が常時出入し、環境は極めて不良であること、また一昨年来広島市及び呉市近辺において、右○○会はこれと対立する暴力団△△会と抗争関係にあり、両派の間に一触即発の危険な状態が続いていること、少年の保護者(両親)は老齢の上病身であり経済的にも困窮し、少年に対する権威を全く喪失し、その保護能力に期待できないこと、少年の性格は我儘、神経質で、他からの干渉を極端に嫌い、気儘な生活をしようとする考え方が支配的であり、また将来への考慮がないため結果を考えずに思いつきばつたりに無計画な行動に出易く、その反面意志薄弱で持続性に欠け、勤労意欲が乏しいことが認められるのである。

してみれば少年は少年法第三条第一項第三号所定の虞犯性ある少年に該当すること明白であり、また右虞犯性を改善し少年を更生さすためには、この際収容保護し規律ある団体訓練のもとに、勤労意欲を涵養し、社会適応性を身につけさせた後社会に復帰せしめるのが相当と認められるので、原決定には所論のような事実の誤認又は処分の不当は存しない。論旨はいずれも理由がない。

よつて少年法第三三条第一項に従い本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 河相格治 裁判官 田辺博介 裁判官 植杉豊)

別紙

抗告申立書

少年 H・B

自分は過去非行を成した事は中学一年か二年の時に一度本をぬすんだ事だけで家庭裁判所の審判にふされた事も有りません。

今まで試験観察や保護観察も受けた事も有りませんが三九年の五月ごろ○○会○本組に入りました。現在は大変後悔しております。今回虞犯として特別少年院に送致されましたが父母の体が悪く自分が父母の店の手伝いをし家業のため力をつくしまじめに生活して行きたいと思つています。

今回の特別少年院に送致に成つた事に対しなつとくしませんので抗告を申立ます。

昭和四十年四月二十日

H・P

広島家庭裁判所呉支部御中

参考

原審決定(広島家裁呉支部 昭四〇(少)三四九号 昭四〇・四・一六決定)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(審判に付すべき事由)

少年は昭和三九年四月頃無断で家出して広島市内で不良交遊を続けるうち同年六月頃同市内の暴力団○○組幹部○本○光の輩下となり、肩書住居地の同人方で犯罪性のある他の同組員らと起居振舞を共にし、保護者の正当な監督に服さないほか正当な理由がなく家庭に寄り附かず、その性格、環境に照らし将来罪を犯す虞がある。

(適条)

少年法第三条第一項第三号イ、ロ、ハ

(処遇について)

1 少年は昭和三六年三月呉市内の○○中学校卒業後約一年九ヶ月熔接工見習として働いたがその後は鮮魚商手伝、調理見習、工員などと転地転職が多くなり安定することなく次第に勤労の意欲を失い、老齢病身の両親を何ら省みることなく、又父母の真面目に働くようにとの切なる願に一向耳を貸さず昭和三九年四月家出して上記組員となつて無為徒食し、ここ約二年間は何ら仕事をせず斯様な生活のためやくざ渡世的な徒遊怠惰性が身についていること。

2 家庭環境についてみるに父母は老齢の上病身であり経済的にも困窮し、少年に対しての保護能力も十分でないこと。

少年は今後正業について更生したいと申出ているが、上記諸点を考慮すればこの際主文の処遇によつて勤労意欲を涵養し社会性を身につけさせる必要があると思料し、少年法第二四条第一項第三号によつて主文のとおり決定する

(裁判官 一之瀬健)

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